木村克己税理士事務所 相続税10万円~ 資産評価に自信あり Zoom等面談可


相続税を少なくするために生前贈与しても、贈与税率が高いから意味ないのでは。贈与税を払っても税負担が少なくなるってどうしてですか?【最新令和5年度税制改正・最新法改正に基づく】


(答えです。)相続税の適用税率よりも、贈与税の適用税率が低い範囲内で贈与することで、贈与税と相続税を合わせた税負担が低くなります。

◆相続税の適用税率よりも、贈与税の適用税率が低い範囲内で贈与すること、とはどういうことでしょうか。

相続税額の税負担を軽減するためには、相続税額に加算されない贈与を行うことが有効な手段となります。

(2024年7月6日の記事に記載)

しかし、その結果、相続税は軽減したものの、贈与税を納めることになり、贈与税と相続税を合わせた税負担は逆に高くなるのであれば、生前対策は無意味ですね。

それでは、相続税の適用税率よりも、贈与税の適用税率が低い範囲内とは具体的にはどの範囲内でしょうか。

代表的な以下の2つのパターンに分けて考えてみます。

◆基礎控除(110万円)以下の贈与を行うパターン

贈与税が発生しない、基礎控除110万円以下の贈与を行うのであれば、贈与税を納めずに、相続税を確実に減らすことが可能です。

◆多額の財産があるので、相続税額を減らすため多額の贈与を行うパターン

では、多額の財産がある場合はどうでしょうか? 毎年110万円以下の贈与を行っていたのでは、確実に少しづつ相続税額を減らしていけますが、効果的とは言えません。どうすべきか、3つのケース別に分けて確認をします。

事例としては、相続人が子供1人で、遺産が10億円、相続の発生が22年後の場合で、以下の3つのケースについて検討します。

➀生前贈与をしないケース

②相続時精算課税を利用して、毎年110万円の贈与を行うケース

➂暦年課税を利用して、毎年1,500万円の贈与を行うケース

➀生前贈与をしないケース

【贈与税は…】生前贈与をしないので、贈与税は0円

【相続税について】

・遺産額10億円

・相続税の対象となる贈与税額 0円

・相続税の計算

遺産10億円∸基礎控除額3,600万円=9億6,400万円

※相続人の基礎控除は3,000万円+600万円×1人=3,600万円

(下記の相続税速算表を使って相続税額を算出します。)

9億6,400万円×55%-7,200万円=4億5,820万円

【全ての税負担額は…】4億5,820万円

②相続時精算課税を利用して、毎年110万円の贈与を行うケース

【贈与税は…】毎年基礎控除(110万円)の範囲内なので、贈与税は0円

【相続税は…】

・遺産額 生前贈与前の遺産額10億円-生前贈与額110万円×22年=9億9,758万円

・相続税の対象となる贈与金額 毎年基礎控除110万円以内の贈与のため    0円

・相続税の計算

 遺産9億9,758万円-3,600万円=9億6,158万円

※相続人の基礎控除は3,000万円+600万円×1人=3,600万円

(下記の相続税速算表を使って相続税額を算出します。)

9億6,158万円×55%-7,200万円=4億5,686万9千円

【全ての税負担額は…】4億5,686万9千円

生前贈与なしの場合の税負担額4億5,820万円と比べると、133万1千円負担が減少しています。

➂暦年課税を利用して、毎年1500万円の贈与を行うケース

【贈与税は…】子への贈与のため(特例税率)適用

贈与税額1,500万円-基礎控除110万円=1,390万円(課税価格)

(下記の特例贈与税速算表を使って贈与税額を算出します。)

課税価格1,390万円×40%-190万円=366万円(贈与税額)

22年分の贈与税

366万円×22年=8,052万円

【相続税は…】

・遺産額 生前贈与前の遺産額10億円-生前贈与額1,500万円×22年=6億7,000万円

・相続税の対象となる贈与税額 1,500万円×3年+(1,500万円×4年-100万円)=1億400万円

・相続税の計算

遺産6億7,000万円+加算金額1億400万円-基礎控除3600万円=7億3800万円

(下記の相続税速算表を使って相続税額を算出します。)

7億3800万円×55%-7,200万円=3億3,390万円

加算金額1億400万円について納付している、贈与税 年額366万円×7年=2,562万円を上記の相続税額から控除した残額が、納付すべき相続税額です。

3億3,390万円-2,562万円=3億828万円(相続税)

【全ての税負担額は…】

相続税3億828万円+贈与税8,052万円=3億8,880万円

生前贈与なしの場合と比べると6,940万円削減。

相続時精算課税制度適用の場合と比べても、6,806万円削減。

なお、このケースでは、毎年贈与税の負担は発生していましたが、贈与税の税率(40%)が、相続税の税率(55%)よりも低いため、トータルの税負担が少なくなっています。

このように、遺産額が特に大きい場合には贈与税を納めてでも、生前贈与することに効果があります。

一般化すると、相続税の税率よりも低い贈与税の税率であれば、効果があるといえます。

遺産の現状を把握したうえで、贈与を行った場合のシミュレーションを行って判断してみてください。また、2~3年に一度は生前対策は見直したほうが計算の精度が高くなることも知っておいていただきたいところです。

(特例)贈与税速算表

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

相続税額速算表

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

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