(質問)相続時精算課税の令和5年度税制改正の内容を再確認したい。

(回答)税制改正により、相続時精算課税の贈与については新たに基礎控除(110万円)が創設されました。これまで相続時精算課税においては、基礎控除はありませんでした。また、この基礎控除を超える部分が相続税に合算されて相続税を計算することになりました(こうして計算された相続税から、既に納付済みの贈与税は控除されるのは従来どおりです。)
そのために、暦年課税の相続開始前7年以内の贈与と比較すると、基礎控除分だけ相続税に加算される税額が少なくなります(暦年課税においては基礎控除の110万円は相続税に加算されるためです。)。
なお、この改正は令和6年1月1日以降の贈与から適用になっています。
(解説)
1 基礎控除の創設
相続時精算課税にも、110万円の基礎控除が導入されました。これにより、相続時選択課税を選択していても、贈与税が年間110万円以下の場合は贈与税申告が不要になりました(相法21の11の2①、21の15①、21の16①、措法70の3の2①)。
なお、改正前の相続時精算課税制度(令和5年12月31日以前の制度)においては、110万円以下の贈与であっても贈与税申告が義務付けられていました。
改正前 | 改正後 |
全ての贈与が申告対象 | 110万円以下の贈与は申告不要 110万円を超える贈与は申告が必要※ |
※例えば500万円の贈与で基礎控除額を差し引いた390万円が申告対象になります。但し、期限内申告であって特別控除2,500万円の枠が390万円以上残っているのであれば、贈与税はかからず、申告はしますが納税は不要となります。
2 暦年課税の相続開始前7年以内の贈与加算と比較する
暦年課税の場合は、相続開始前7年以内の贈与財産の価額(基礎控除前)を相続税の課税価格に加算します。
一方、相続時精算課税においては、相続開始前7年以内であっても(年数に関係なく)、基礎控除額(110万円)以下の贈与の場合は加算が不要(基礎控除後の価額が加算対象)です。
3 施行時期
上記の改正は、令和6年1月1日以降の贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されています(改正法附則19①④⑤、51④)。
