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贈与税には「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2つの制度があると聞いたのですが、よくわからないです。それぞれの特徴と、それぞれの合理的な使い方があったら、教えてください。【最新令和5年度税制改正・最新法改正に基づく】


(答えです。)贈与税の制度には、「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2つがあります。

両制度の特徴は以下のとおりです。

①暦年課税制度

◆贈与税の計算方式 

基礎控除110万円までは贈与税はかからないです。税率は特例贈与か、一般贈与かの2種類(直系尊属(祖父母や父母)から18歳以上の子や孫への贈与が特例贈与、それ以外の全ての贈与が一般贈与)に区分されています。

◆相続税との関係 

相続開始前7年以内の贈与財産(※1)(但し、4年~7年分は合計で100万円を控除した残額)については、相続税に加算することになります。

暦年課税として計算して納めた贈与税額は、相続税額を限度に控除されます。(但し、マイナス分があっても還付されません。)

※1 令和5年12月31日までの贈与については、相続開始前3年以内の贈与財産です。

②相続時精算課税制度

◆贈与税の計算方式 

基礎控除である年間110万円に贈与税は掛かりません(※2)。基礎控除とは別に、特別控除(贈与者毎に限度額2,500万円まで複数年に渡って使用可。)も贈与税は掛かりません。税率は一律に20%です。

※2 令和5年12月31日までの贈与については、基礎控除はありません。

◆相続税との関係 

贈与税の時期にかかわらず、贈与財産から毎年の基礎控除110万円(※2、※3)を控除した残額を相続財産に加算します。

相続時精算課税として計算して納めた贈与税額は、相続税額から全額控除されます(マイナス分は還付されます)。

※2 令和5年12月31日までの贈与については、基礎控除はありません。

※3 加算対象となる金額から基礎控除の金額を控除する取扱いは、暦年課税制度にはなく、まとまった財産を効率的に次世代に移転しやすくなるための制度として改正されています。

両制度は選択制です。

両制度とも、贈与した財産が贈与税の課税対象になりますが、それぞれ独自のルールが相続税の計算にも影響しています。

(上記の「◆相続税との関係」をご参照ください)

なお、相続時精算課税制度を一旦選択した場合には、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用になります。そのため、選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、すべて相続時精算課税制度が適用になり、もう暦年課税を選択することはできなくなります。

それでは、いよいよ本題です。暦年課税制度と相続時精算課税制度のどちらが、お得で合理的でしょうか。

例とて、2,610万円を親から長女に対して贈与したとします。

令和6年以降に一括(一年間)で2,610万円の贈与をする場合、相続時精算課税制度においては、贈与税の基礎控除額110万円を控除した残額2,500万円に対しても特別控除額(2,500万円)を控除できるので、贈与税は0円です。

これが、暦年課税制度だった場合は、基礎控除額110万円を控除した残額に贈与税が課税されます。直系尊属(祖父母、父母など)からの、18歳以上の子や孫への贈与なので、税率の低い特例贈与の税率【特例贈与財産用(特例税率)速算表を以下に示します。】が適用されるとはいえ、860万円の贈与税が課税されます。

【贈与税計算】2,500万円(基礎控除後)×45%-265万円=860万円

このことから、親から長女への2,610万円の贈与については、贈与税のみを考えると、特別控除額2,500万円が使える相続税精算課税制度のほうが、合理的選択といえるでしょう。

なお、将来の相続時の税額も含めて考えると、どうなるでしょうか?

上記の例で、親に相続が発生したときに、長女に2,610万円の贈与をしたのが、8年前だったとしたらどうなるでしょうか。

暦年課税制度であれば、相続開始前7年より前に贈与された財産は相続税の計算には含めないので、相続税額はいずれにしても同じ金額です。

これに対して、相続時精算課税制度では、8年前の贈与においても、基礎控除(令和5年12月31日までの贈与については、基礎控除はありませんので結局、令和6年分の基礎控除110万円)を除いた2,500万円を相続財産に含めて、相続税を計算することになります。

なお、支払済みの贈与税は相続税計算の際に減額されるとはいえ、相続税は累進税率ですから、相続税額が積み増されることで高い税率区分に移行して、高額な相続税負担が発生していたかもしれませんでした。

このように相続財産が多い被相続人が、相続時精算課税制度適用を晩年(個人差があります。)になる前から行う場合は、贈与税負担は抑えることができても、相続税がそれ以上の負担増になる可能性があります。

税負担全体を少なくして次世代へ財産を移転するためには(相続税と贈与税の総額を減らすためには)、税理士に相談のうえでシミュレーションした結果に基づいた生前対策するのが、結局は合理的な判断と思います。

特例贈与財産用(特例税率)相続税法第21条の7、租税特別措置法第70条の2の5

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

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