木村克己税理士事務所 相続税10万円~ 資産評価に自信あり Zoom等面談可


配偶者への生前贈与について、最終的には子への相続税を減らす目的の場合、どのように生前贈与をしたらいいですか。【最新令和5年度税制改正・最新法改正に基づく】


(答えです。)ケース1(配偶者への生前贈与なし)とケース2(配偶者への生前贈与あり)で配偶者への生前贈与の活用の仕方を比較することで判り易く説明します。

なお、ケース1、ケース2はともに、居住用不動産4,000万円と預金1,000万円が財産総額のご夫婦で、夫(75歳)、妻(70歳)(専業主婦)、子供(50歳)1人(親と別居、持家あり)の3人を想定します。年齢等から➀夫→②妻の順で亡くなるものと想定します。

ケース1 

時間の経過に従って(順路1)→(順路2)→(順路3)→(順路4)の順番で事態が発生し又は行動した場合です。

(順路1)生前贈与などの対策は何もしないことにしました。

(順路2)夫婦の財産状態と今後の見通しを考えました。

◆夫の財産

居住用不動産4,000万円 預金1,000万円

◆妻の財産

    0円

◆第一次相続(夫の相続)時の基礎控除額の想定

 4,200万円

(3,000万円+600万円×2人(妻と子)=4,200万円)

◆第二次相続(妻の相続)時の基礎控除額の想定

 3,600万円

(3,000万円+600万円×1人(子)=3,600万円)

(順路3)第一次相続(夫の相続)が発生しました。

居住用不動産4,000万円、預金1,000万円は妻の老後のために必要なので妻が相続しました。「配偶者の税額軽減」により、相続税は0円で済みました。

※配偶者の税額軽減とは、配偶者が法定相続分又は1.6億円まで取得する財産については相続税がかからない制度のことです。

※【注意】相続税0円でも「配偶者の税額軽減」を使った場合は、相続税申告が必要です。

(順路4)第二次相続(妻の相続)が発生しました。

居住用不動産4,000万円、預金1,000円を子が妻から相続しました。

この場合には、結局、相続税額が160万円発生しました。この支払は、相続人である子が支払うことになりました。

相続税の計算式(相続税の税額表(相続税法第16条)参照)です。

(4,000万円(不動産)+1,000万円(預金)-3,600万円(基礎控除額))×15%-50万円=160万円

相続税の税額表(相法16)

課税遺産総額から基礎控除額を除いたもの税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超  3,000万円以下15%50万円
3,000万円超  5,000万円以下20%200万円
5,000万円超  1億円以下30%700万円
1億円超    2億円以下40%1,700万円
2億円超    3億円以下45%2,700万円
3億円超    6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

ケース2

時間の経過に従って(順路1)→(順路2)→(順路3)→(順路4)の順番で事態が発生し又は行動した場合です。

(順路1)配偶者への生前贈与をしました。

夫は妻に居住用不動産4,000万円のうち2,000万円(※1,2,3)を贈与(持分1/2)しました。

※1 「贈与税の配偶者控除」を利用しました。2,000万円までの居住用不動産の贈与は無税で移転できます。

※2 但し、「贈与税の配偶者控除」を利用するときは、贈与税が発生しない場合でも贈与税申告を税務署に行うことが必要になります。

※3 持分1/2を贈与しました。

(順路2)夫婦の財産状態と今後の見通しを考えました。

◆夫の財産

居住用不動産2,000万円 預金1,000万円

◆妻の財産

居住用不動産2,000万円

◆第一次相続(夫の相続)時の基礎控除額の想定

 4,200万円

(3,000万円+600万円×2人(妻と子)=4,200万円)

◆第二次相続(妻の相続)時の基礎控除額の想定

 3,600万円

(3,000万円+600万円×1人(子)=3,600万円)

(順路3)第一次相続(夫の相続)が発生しました。

居住用不動産2,000万円(4,000円不動産の1/2持分)は子供が相続することとし、預金1,000万円は妻が相続しました。基礎控除(4,200万円)以下のため、相続税は0円で済みました。

※基礎控除以下なので、相続税申告は不要でした。

(順路4)第二次相続(妻の相続)が発生しました。

居住用不動産2,000万円(4,000円不動産の1/2持分)、預金1,000万円を子が相続しました。基礎控除(3,600万円)以下のため、相続税は0円で済みました。

※基礎控除以下なので、相続税申告は不要でした。

復習ですが、ケース1は、配偶者への生前贈与を実行しない場合で、その後の相続対策で「配偶者の税額軽減」をしても、子に160万円の相続税が発生したケースです。

ケース2は、配偶者への生前贈与を実行した場合です。その後の第一次相続においても、第二次相続においても税額が発生しなかった、相続税の基礎控除以下の金額の相続となったために、申告書の提出すら必要なくなったケースです。

相続で持分権に分割することは、望ましくないという見方もありますが、今回のような場合は問題ないですので、選択肢の一つとして、常にいろいろ考えることは重要です。

結論としては、早い対策ができれば、多くの選択肢の中から、よりよい対策を講じることができるということです。


PAGE TOP