木村克己税理士事務所&KimuraPartner.

相続税、贈与税の税務相談はきむらかつみ税理士 Zoom相談 GoogleMeet相談 MicrosoftTeams相談可


相続によって取得した財産には全て相続税が掛かりますか。相続した財産以外でも相続税が掛かるものはありますか。生前贈与した財産にも相続税は掛かりますか。法令の根拠も示して説明してください。【最新令和5年度税制改正・最新法改正に基づく回答】


(答えです。)(令和6年9月2日回答の一部加筆)

(1)相続税法では、原則として民法の規定に基づいて、相続又は遺贈により取得した財産を課税対象としています(これを「本来の相続財産」といいます。)。

民法 第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

但し、民法に規定された財産のなかでも、社会政策的見地や国民感情等から相続税の課税対象とすることが適当でないものについては、相続税の非課税財産として相続税の課税対象から除くなど、相続税法に独自の規定が設けられています。こうした非課税財産については今回は(5)相続税の対象とならない財産でまとめています。

以下は、「本来の相続財産」で課税対象のものの例です。

種類内容
土地宅地、農地、山林、雑種地など
家屋家屋(未登記家屋を含む)
有価証券株式、出資、公債、社債、証券投資信託、貸付信託受益証券など
現金・預金手許現金、普通預金、当座預金、定期預金、郵便貯金、定期積金など(預貯金にかかる未収利息を含む。)
家庭用財産家具、什器備品、電話加入権、書画、骨董品、宝石など
その他の財産車両、貸付金、ゴルフ会員権、特許権、実用新案権など
事業用財産商品、製品、仕掛品、事業用車両、機械装置、売掛金、受取手形、貸付金など
会社オーナーの財産株式(出資金を含む。)、会社に対する貸付金、及び未収入金など

(2)相続や遺贈によって財産を取得したのと同様な経済的効果がある以下の➀~➃の財産については、相続又は遺贈によって取得したものとみなされて相続税法上の課税対象財産とされます(これを「みなし相続財産」といいます。)。本来の相続財産ではないことから、本来遺産分割協議の対象資産ではありません。

➀生命保険金

相続税法第三条第一号

民法では生命保険金(死亡保険金)は、死亡までは存在しておらず、死亡を原因として発生するものですので本来の遺産ではありませんが、相続税法では遺産とみなして相続税の対象に含めます。なお、生命保険金には下記の非課税枠があるため、下記金額を超過した部分のみ相続税が課税されることになります。

法定相続人の数×500万円

➁死亡退職金

相続税法第三条第二号

死亡退職金も生命保険金同様に本来の遺産ではありませんが、相続税法上は遺産とみなして相続税の課税対象にしています。

死亡退職金にも生命保険金同様に下記非課税枠が用意されています。

法定相続人の数×500万円

なお、死亡後に会社から支給される給与、賞与は会社から支給されているということでは似ていますが、給与・賞与はみなし相続財産にはあたりません。死亡時において被相続人が受け取るべきであった、本来の相続財産です。

➂生命保険契約に関する権利

相続税法第三条第三号

生命保険契約に関する権利とは、被相続人が保険料を負担していて、契約者と被保険者が被相続人以外の保険契約をいいます。

こうした契約の場合、契約者の固有の財産であっても、被相続人の本来の財産には該当しません。しかし、相続税法においては保険料を負担した被相続人の遺産とみなして相続税が課税されることになります。

この場合の相続財産に計上すべき金額は、亡くなった日に解約したとした場合に戻ってくる金額(解約返戻金額)となります。またこの場合、実際に解約する必要はありません。生命保険契約に関する権利には、➀、➁のような非課税枠は用意されていません。なお、保険料負担者が被相続人以外の人であれば、相続税の対象にはならず、贈与税や所得税の対象となります。

➃定期金に関する権利

相続税法第三条第四号、五号、六号

定期金に関する権利とは、被相続人の死亡後に遺族等に定期的に支払われる年金をいいます。個人年金保険が該当します。

定期金に関する権利についても遺族等の受取人固有の財産であり、本来の遺産には該当しませんが、相続税法上、遺産とみなして相続税の対象に含めています。

以下は「みなし相続資産」の例です。

種類内容
生命保険金等死亡保険金など一部非課税
退職手当金等被相続人の会社から支払われる退職金
生命保険契約に関する権利保険事故が発生していない生命保険契約(被相続人以外の者が契約者である契約で、掛捨て保険を除く。)で被相続人が保険料を負担している場合
定期金に関する権利定期金給付事由が発生していない定期金給付契約(生命保険契約を除く。)で被相続人が掛金又は保険料を負担し、かつ、被相続人以外の者が定期金給付契約の契約者である場合
定額譲受益、債務免除益等定額譲受、債務免除等が遺言によって行われた場合(債務者が資力を喪失している場合には課税されない場合あり)
信託受益権信託の効力が生じた場合において、遺言により適正な対価を負担せずに当該信託の受益者等となる者がある場合

(3)被相続人から生前に「相続時精算課税制度」による贈与を受けた財産は、令和6年1月1日以降分の基礎控除(年間110万円(受贈者毎))を除き全ての額が、贈与時の評価額で相続税に加算されます。

相法21の9、21の11の2①②、21の15①、相令5、5の2、租法70の2の6①、70の3の2①②③、70の3の3、令和5年改正法附則19

以下は「相続時精算課税制度」による相続税への加算対象財産です。

種類内容
相続時精算課税制度による贈与のうち相続税への加算対象令和6年1月1日以降の相続時精算課税の基礎控除(年間110万円、受贈者毎)を除き全ての額が、相続税への加算対象です。

※なお、相続時精算課税の適用によって支払った贈与税額については、相続税から全額控除されます。

(4)被相続人からの相続開始前7年(令和5年12月31日以前の贈与については3年)以内の「暦年贈与」は贈与時の評価額で相続財産に加算されます(但し、相続開始前3年超7年以内の贈与は、合計100万円まで加算されません。)。

相法19➀、相基通19-1、令和5年改正法附則19

以下は「暦年贈与制度」による相続税への加算対象財産です。

種類内容
暦年贈与制度による贈与で相続税への加算対象被相続人からの相続開始前7年(令和5年12月31日以前の贈与については3年)以内の暦年贈与は贈与時の評価額で相続財産に加算されます。(相続開始前3年超7年以内の贈与は、合計100万円まで加算されません。)

※なお、暦年贈与の適用によって支払った贈与税額については、相続税から全額控除されます。

(5)相続税の対象とならない財産

 次に掲げる財産は、社会政策的見地や国民感情その他の理由から相続税の課税対象とすることが適当でないものとされています。相続税の非課税財産ですので課税対象から必ず除外しなければなりません。

根拠法内容
相続税法第十二条第一号皇室経済法(昭和二十二年法律第四号)第七条(皇位に伴う由緒ある物)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
相続税法第十二条第二号墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
相続税法第十二条第三号宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令1で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
相続税法第十二条第四号条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度で政令2で定めるものに基づいて支給される給付金を受ける権利
相続税法第十二条第五号相続人の取得した第三条第一項第一号に掲げる保険金(被相続人の死亡に伴って受取る生命保険契約又は損害保険契約に基づく保険金)のうち、法定相続人の人数×500万円まで
相続税法第十二条第六号相続人の取得した第三条第一項第二号に掲げる給与(被相続人の死亡により当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令3で定める給付を含む。)で被相続人の死亡後三年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合)のうち、法定相続人の人数×500万円まで
(政令1)(相続又は遺贈に係る財産につき相続税を課されない公益事業を行う者の範囲)
相続税法施行令第二条  法第十二条第一項第三号に規定する宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者は、専ら社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条(定義)に規定する社会福祉事業、更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)第二条第一項(定義)に規定する更生保護事業、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の三第九項(定義)に規定する家庭的保育事業、同条第十項に規定する小規模保育事業又は同条第十二項に規定する事業所内保育事業、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条(学校の範囲)に規定する学校又は就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第六項(定義)に規定する認定こども園を設置し、運営する事業その他の宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業で、その事業活動により文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するところが著しいと認められるものを行う者とする。ただし、その者が個人である場合には第一号に掲げる事実、その者が法第六十六条第一項に規定する人格のない社団又は財団(以下この条において「社団等」という。)である場合には第二号及び第三号に掲げる事実がない場合に限る。
一その者若しくはその親族その他その者と法第六十四条第一項に規定する特別の関係(以下この条において「特別関係」という。)がある者又は当該財産の相続に係る被相続人若しくは当該財産の遺贈をした者若しくはこれらの者の親族その他これらの者と特別関係がある者に対してその事業に係る施設の利用、余裕金の運用、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給その他財産の運用及び事業の運営に関し特別の利益を与えること。
二当該社団等の役員その他の機関の構成、その選任方法その他当該社団等の事業の運営の基礎となる重要事項について、その事業の運営が特定の者又はその親族その他その特定の者と特別関係がある者の意思に従つてなされていると認められる事実があること。
三当該社団等の機関の地位にある者、当該財産の遺贈をした者又はこれらの者の親族その他これらの者と特別関係がある者に対して当該社団等の事業に係る施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、当該社団等の機関の地位にある者への選任その他財産の運用及び事業の運営に関し特別の利益を与えること。
(政令2) 
(心身障害者共済制度の範囲)
相続税法施行令第二条の二  法第十二条第一項第四号及び第二十一条の三第一項第五号に規定する政令で定める共済制度は、所得税法施行令第二十条第二項(地方公共団体が実施する共済制度)に規定する共済制度とする。
(生命保険契約等の範囲)
第一条の二  法第三条第一項第一号に規定する生命保険会社と締結した保険契約その他の政令で定める契約は、次に掲げる契約とする。
一省略
二省略
三次に掲げる契約
イ省略
ロ省略
ハ省略
ニ省略
ホ省略
ヘ法第十二条第一項第四号に規定する共済制度に係る契約
(政令3)なし


PAGE TOP