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相続時精算課税と暦年課税の改正を踏まえ、これらの制度の利用について税負担の面からはどのように判断するべきですか。                        【最新令和5年度税制改正・最新法改正に基づく回答】



(回答です。)

一概には決められませんが、いくつかの前提条件を決めたうえでのシミュレーションが有効だと思われます。いくつかの前提条件というのは以下のものです。

(1)贈与期間(贈与者の年齢などから期間を想定)

(2)贈与金額(贈与者の資産内容や今後の使用予定など)

(3)贈与対象物(現金、有価証券、不動産等)

(4)贈与者の資産総額(大資産家か、中程度か、一般的か)

(解説)

1 相続税や贈与税のシミュレーションをするにしても、様々なパターンがあり、一概にどちらがよいのかを特定することは難しいです。このため上述した一定の前提を決めたうえで暦年課税、相続時精算課税を比較してみることが有効です。

2 但し、贈与者がそれほど高齢でない場合(例えば70代ぐらい)は、暦年課税からスタートして、相続開始がある程度見えてきたら相続時精算課税に移行することで、相続時精算課税では相続税に加算されないこととなった110万円の基礎控除を活用する方法が有利になるものと思われます。(最初から相続時精算課税でもよいのですが、相続時精算課税の選択は税務署に届出が必要であり一度選択すると暦年課税には戻れないため、そのことからもまずは暦年課税からスタートすることが考えられます。)

3 また、高額な贈与(例えば、賃貸不動産や上場の検討がある株式等について)は、暦年課税では累進課税のため税率が高くなってしまうことから、これまで通り相続時精算課税(贈与税率20%)が利用されるケースが多いものと思われます。

4 なお、贈与財産価額の相続開始前7年加算は、相続、遺贈により財産を取得する人が対象なので、そうではない人(例えば養子縁組していない孫、代襲相続人ではない孫等)への暦年課税の贈与は有効であると考えられます。

5 養子縁組している孫等についても、早期からの贈与はもちろん有効です。また、財産額が非常に高額になるケースでは、養子縁組はかなり有効な方法(基礎控除による減額はそれほどでもない場合でも相続税率の減少が顕著な場合があります。)であり7年加算に関係なく、養子縁組されることは有効なものと思われます(シミュレーションは必要)。

6 これまでの内容を踏まえて、身近で合理的な贈与の例をお示しします。

(1)贈与期間20年の場合
 ① 当初13年は暦年課税の贈与
 ② その後7年は相続時精算課税の贈与に変更する(相続前7年加算の対象外にするため)。
 ③ 贈与額110万円程度(高額にならないもの)(複数人に贈与する場合も同様にする。)
 ④ 対象者は子の場合を想定しています(推定相続人)。
(対象者が孫(非相続人、遺贈で財産取得がない場合には、相続税加算がないので20年間、暦年課税贈与でもよいです。)
 ⑤ 相続財産が特に大きい場合は、相続時精算課税による贈与(贈与税率20%)をこれとは別途(別の人に対しても)検討したほうがよいです。

(2)贈与期間10年の場合
 ① 当初3年は暦年課税の贈与
 ② その後7年は相続時精算課税の贈与に変更する(相続前7年加算の対象外にするため)。
 ③ 贈与額110万円程度(高額にならないもの)(複数人に贈与する場合も同様にする。)
 ④ 対象者は子の場合を想定しています(推定相続人)。
(対象者が孫(非相続人、遺贈で財産取得がない場合には、相続税加算がないので10年間、暦年課税贈与でもよいです。)
 ⑤ 相続財産が特に大きい場合は、相続時精算課税による贈与(贈与税率20%)をこれとは別途(別の人に対しても)検討したほうがよいです。

(3)贈与期間5年の場合
 ① 5年間相続時精算課税の贈与(相続前7年加算の対象外にするため)。
 ② 贈与額110万円程度(高額にならないもの)(複数人に贈与する場合も同様にする。)
 ③ 対象者は子の場合を想定しています(推定相続人)。
(対象者が孫(非相続人、遺贈で財産取得がない場合には、相続税加算がないので5年間、暦年課税贈与でもよいです。)
 ④ 相続財産が特に大きい場合は、相続時精算課税による贈与(贈与税率20%)をこれとは別途(別の人に対しても)検討したほうがよいです。

 


 


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