木村克己税理士事務所&KimuraPartner.

相続税、贈与税の税務相談はきむらかつみ税理士 Zoom相談 GoogleMeet相談 MicrosoftTeams相談可


住宅を購入する予定で親からの援助などで資金調達する予定です。将来の相続税負担を減らすことも考慮して、何かアドバイスをお願いします。【最新令和5年度税制改正・最新法改正に基づく】


(お答えします。)親からの援助金の取扱いは大きく次の3パターンに分かれます。これらの3パターンを検討して、ご自身にとって最適な方法を考えましょう。

1 選択肢は大きく分けて3パターンあります。

方法適用制度親の相続時注意点
Ⅰ(※2)援助金の贈与住宅取得等資金の(贈与税の)非課税制度非課税金額を超えた部分の金額は、相続税に生前贈与加算します。令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与が対象(平成21年分から令和5年分までの旧制度利用者は対象外です。)
Ⅱ(※2)援助金の贈与相続時精算課税制度(※1)相続財産の価額に相続時精算課税制度適用額のうち、相続時精算課税の基礎控除額を除き、相続税に生前贈与加算します。親からの相続財産が相続時精算課税制度適用額を加算しても相続税の基礎控除額以下である場合には有効です。
Ⅲ(※2)親が子の居住用不動産の一部を持分で所有
(※3)
親の持分相当額を相続により取得(相続時の不動産の評価額で相続税を計算)します。金銭での贈与よりも不動産持分評価額の方が、一般的に低額となるため、Ⅱの方法と比べると、相続税額が下がることになります。   ー

(※1)贈与者の年齢要件(贈与年の1月1日において60歳以上)を満たさない場合でも、住宅取得資金である場合は、「住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(租税特別措置法第70条の3)」により、相続時精算課税制度の適用が可能になっています。

(※2)上記ⅠとⅡ、又はⅠとⅢを組み合わせる方法も可能です。

(※3)親の資金のみで居住用不動産を購入し、全てを親名義とし相続により承継する方法もあります。この場合は、親自身が居住用不動産について要件を満たせば、小規模宅地等の特例の適用を受けることも可能です。

2 それでは、住宅資金を親から援助を受ける際の節税方法について検討します。ケースとしては親からの援助金と子が借りた住宅ローンの組合せについて、最適な方法を探ってみましょう。

(1)前提条件

 子の居住用不動産の購入のための資金需要  6,000万円

  そのうち、子が住宅ローンを借りる予定  3,000万円

  そのうち、親からの援助金を受け取る予定 3,000万円

この場合の親からの援助金の処理方法は3パターンになります。

①金銭贈与のみ実施

新たな住宅取得等資金の非課税制度(租税措置法第70条の2)や、相続時精算課税制度を活用して贈与税・相続税対策をします。

②親との共有名義のみ実施

③親との共有名義プラス、金銭贈与を併用で実施

新たな住宅取得等資金の非課税制度(租税措置法第70条の2)や、相続時精算課税制度を活用して贈与税・相続税対策をします。

(2)それでは、具体的なケースを検討しましょう。ケーススタディで論点がいろいろ見えてきます。

ケース① 親から金銭贈与を受けとって、住宅取得等資金の非課税制度と相続時精算課税制度を利用するケース

親からの金銭贈与で

3,000万円受取り

子が金融機関からの借入れ
3,000万円(所得税の住宅ローン控除も適用)

そのうえで、子が6,000万円で自らの居住用不動産を購入しました。

建物:2,000万円

土地:4,000万円

全て子の名義の財産にしました。

金銭贈与の場合は贈与税の申告自体は必要です。但し、

イ 新たな住宅取得等資金の非課税制度(租税措置法第70条の2)

父母・祖父母から18歳以上の子(孫)への贈与が対象で、500万円(省エネ等住宅の場合は1,000万円)までが非課税となります。

ロ 相続時精算課税課税制度

祖父母又は親(特例により60歳以上でなくても相続時精算課税制度が選択できる。)からの贈与については2,500万円の特別控除があり、この2,500万円を超える金額については、20%の税率で、贈与税が課税されます。

ケース①の税額計算

3,000万円(親からの金銭贈与)ー110万円(基礎控除)-500万円(住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税 租税特別措置法70条の2)-2,390万円(特別控除)=0円→贈与税は掛かりません。

その後、父の相続が発生しました。

贈与者の相続の時点で2,390万円(特別控除分)が相続税の計算に加算されることになります。相続税の税額はその他の財産との合算に対して税率が掛けられるものの、2,390万円が追加されるのは相続税額にも大きな影響が出そうです。

ケース② 親と共有名義で居住用不動産を購入するケース

親が負担する住宅代金    3,000万円

子が金融機関からの借り入れ 3,000万円(所得税の住宅ローン控除も適用)

父との共有で不動産を取得したため、贈与税は発生しません。

父と子が1/2ずつ共有名義としました。

建物:2,000万円(取得時)

土地:4,000万円(取得時)

その後、父の相続が発生しました。

相続税課税対象額:
建物2,000万円×60%(※1)×1/2=600万円(概算)

土地4,000万円×80%(※2)×1/2=1,600万円(概算)

:合計2,200万円

(※1)建物の評価額については、固定資産税(家屋)の評価額による。

(※2)土地の評価額については、路線価方式又は固定資産税からの比準方式による。

(ケース①とケース②の比較結果から言えること)

父からの相続額が、相続税の基礎控除額を超える場合はケース②の方が有利です。この例でもケース①では2,390万円が相続税に加算されますが、ケース②では2,200万円が相続税に加算されます。このため差引き190万円分についてケース②が有利となりました。

 なお、相続財産についてはできるだけ、現金預金などよりも、土地建物を相続するほうが、相続税を圧縮する効果はあります。今回のように一部共有でもその効果はあります。相続後にその資金で家を建てるのであれば、建築した家を相続したほうが相続税の圧縮効果があることがこの例でも解ります。今回の例では土地は80%程度(20%程度減)、建物は60%(40%程度減)分の減額があるものとして概算の計算をしました。

ケース③ 親と共有名義で居住用不動産を購入し、住宅取得資金の非課税制度を利用するケース

親から子への金銭贈与で、500万円の受け取り

さらに親が住宅取得のために支出する金額が、2,500万円

子が金融機関からの借入れた住宅購入等資金が、3,000万円

(所得税の住宅ローン控除も適用)

これにより支払い額の割合に合せて、父が25/60、子が35/60の共有名義の子の居住用不動産を購入しました。

建物:2,000万円(取得時)

土地:4,000万円(取得時)

親からの贈与について贈与税申告(500万円)をしますが、住宅取得等資金の非課税制度の適用の届を併せて行うことで、贈与税は非課税となります。

その後、父の相続が発生しました。

相続税課税対象額:
建物2,000万円×60%(※1)×25/60=500万円(概算)

土地4,000万円×80%(※2)×25/60=1,333万円(概算)

:合計1,833万円

(※1)建物の評価額については、固定資産税(家屋)の評価額による。

(※2)土地の評価額については、路線価方式又は固定資産税からの比準方式による。

(ケース②とケース③の比較結果から言えること)

親との共有名義で不動産を購入する場合でも、住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度は利用するべきです。この例ではケース②で2,200万円分が相続税に加算されますが、住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度を利用したケース③では1,833万円のみが相続税に加算される計算ですので差引きで、さらに367万円分が有利になりました。


PAGE TOP