木村克己税理士事務所&KimuraPartner.

相続税、贈与税の税務相談はきむらかつみ税理士 Zoom相談 GoogleMeet相談 MicrosoftTeams相談可


暦年課税制度と相続時精算課税制度では、特別控除額(2,500万円)があることから、選ぶべき合理的な選択肢は相続時精算課税制度ですか。【最新令和5年度税制改正・最新法改正に基づく】


(答えです)相続税を少なくするための生前贈与を行ったつもりでも、生前贈与加算の対象になる贈与を主にしていた場合、相続税額は減りません。生前贈与加算対象にならない贈与を行えば、相続税額の削減になります。相続時精算課税制度の特別控除(2,500万円)は生前贈与加算対象です。相続税の削減効果はありません。

では、生前贈与加算対象になる生前贈与というのは何のことでしょうか。

贈与税の2つの制度「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」とでは、それぞれ相続税の加算対象となる贈与が異なっています。

暦年課税制度と相続時精算課税制度における、令和6年1月1日以降の贈与についての加算期間と対象金額は、以下のとおりです。【令和6年1月1日以降分の贈与について考えます。】

◆暦年課税制度(相続税への加算対象)

相続開始前7年以内の贈与金額の全額

(但し、相続開始前4年から7年以内の贈与については、その総額から100万円を控除します。)

贈与税(暦年課税制度)の基礎控除額(110万円)も、相続税に加算されます。

◆相続時精算課税制度(相続税への加算対象)

相続時精算課税の贈与について、基礎控除(110万円を控除)を超える贈与金額

事例としては、2024年07月08日に解説した、相続人が子供1人で、遺産が10億円、相続の発生が22年後の場合で、以下の3つのケースについて検討した事例をベースに考えてみます。

➀生前贈与をしないケース

②相続時精算課税制度を利用して毎年110万円の贈与を行うケース

➂暦年課税制度を利用して、毎年1,500万円の贈与を行うケース

➀、②、➂のケースについては2024年07月08日の記事に解説がございます。

この事例に、➃相続時精算課税制度を適用して毎年610万円の贈与を行うケースを追加します。

毎年の基礎控除の110万円のほかに、追加の500万円については特別控除額2,500万円に達するまでは、贈与税控除の適用があります。それが、相続税にはどのように反映しているでしょうか。

【贈与税は…】毎年基礎控除(110万円)の適用あり。当初5年間は特別控除2,500万円の範囲のため税額0円、6年目から22年目まで(17年間)は贈与税の課税ありです。

課税計算は以下のようになります。

500万円×20%-30万円=70万円

(下の特例贈与税速算表より)

70万円×17年=1,190万円

【相続税は…】

・遺産額 生前贈与前の遺産額10億円-生前贈与額610万円×22年=8億6,580万円

・相続税の対象となる贈与金額 毎年の贈与610万円のうち基礎控除110万円(令和6年分基礎控除額)を除いた金額500万円

500万円×22年=1億1,000万円

・相続税の計算

遺産8億6,580万円+相続税の対象となる贈与税額1億1,000万円-3,600万円(相続税の基礎控除額)=9億3,980万円

※相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×1人=3,600万円

(下記の相続税速算表を使って相続税額を算出します。)

9億3,980万円×55%-7,200万円=4億4,489万円

(下記の相続税速算表より)

【全ての税負担額は…】相続税額4億4,489万円+贈与税額1,190万円=4億5,679万円

生前贈与なしの場合の相続税

(2024年07月08日の記事より)

4億5,820万円

相続時精算課税制度を使って毎年110万円贈与した場合の相続税(これも2024年07月08日の記事より)

4億5,686万9千円

(何もしなかった場合との比較133万1千円削減)

そして今回計算した、相続時精算課税制度を使って毎年610万円贈与することで贈与税の特別控除(2,500万円をフル活用)した場合の相続税額は4億5,679万円(何もしなかった場合との比較は141万円削減)

毎年110万円贈与していた場合と比べると、7.9万円削減効果がみられました。

毎年500万円分、追加で生前贈与を行いましたが贈与税と相続税を併せた削減効果という観点からみると、成果は小さいものでした。

このように、税額の削減効果はあまり変わりませんでした。特に、②相続時精算課税制度を利用して毎年110万円の贈与を行うケースと、➃相続時精算課税制度を使って毎年610万円贈与して、贈与税の特別控除(2,500万円)を受けるケースは、実質相続税の縮減効果はほぼ変わらないことを見ていただけたと思います。

(特例)贈与税速算表

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

相続税額速算表

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

PAGE TOP